睡眠リズムが毎日ずれていく『非24時間睡眠覚醒症候群』の原因と治療法

『非24時間睡眠覚醒症候群』は睡眠障害のひとつです。自由継続リズム型と呼ばれることもあります。寝つく時刻と起きる時刻が毎日遅れていくのが基本的な症状です。

非24時間睡眠覚醒症候群は、視覚に障害がある方に多く見られます。しかし、近年では視覚障害を持たない人の発症が報告されています。

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どういう睡眠障害なのか?

非24時間睡眠覚醒症候群になると、入眠時刻と起床時刻が、約1時間ずつ後退していきます。たとえば今日深夜0時に眠ったとすると、次の夜は深夜1時、その次は深夜2時というように、入眠時刻がずれていきます。

ずれる量には個人差があり、毎日3時間も遅れる症例や、日によって遅れる時間に変動(1~3時間)のある症例も確認されています。

次のグラフは、非24時間睡眠覚醒症候群の方の、1か月間の睡眠時間帯を表しています。睡眠時間帯が斜めにずれていく様子が見てとれます。

また、約2週間ごとに睡眠時間帯が真逆になり、日中に活動する時期と、夜間に活動する時期が交互にやってきます。簡潔に言えば、定期的に昼夜逆転します。

この定期的に昼夜逆転するというのが、学業や仕事を困難なものにします。単純に朝起きるのが遅いだけなら「夜間の学校に行く」「夜勤の多い職業に就く」などの選択肢があります。しかし、非24時間睡眠覚醒症候群の場合はそれも難しいです。

視覚障害のない非24時間睡眠覚醒症候群の臨床データによると、

57例中56例において、退学、休学、退職、あるいは休職を体験している。

臨床睡眠学 睡眠障害の基礎と臨床 / 日本臨牀社

とのことなので、学業や仕事の不都合が生じる可能性は、非常に高いと言えます。

「なんとか頑張って朝起きるようにすれば、そのうち治るんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、無理をして朝の起床を続けると「極度の眠気」「集中力の低下」「慢性的な疲労感」に悩まされることになります。そのため、睡眠時間帯を固定しようとしても、うまくいかない場合が多いようです。

なお、「この睡眠障害になっているかも?」と思った方は、まずは睡眠日誌をつけてみましょう。入眠時刻と起床時刻を記録すれば、周期的なズレがあるのか確認できるからです。10~15分の誤差は気にせず、ざっくりとした睡眠時間帯が分かるように記録すればOKと思います。

ただし、短期的には入眠障害(=夜寝つけない)に見えてしまう可能性もあるので、睡眠日誌は1ヶ月以上つけることをオススメします。

非24時間睡眠覚醒症候群の原因とは

非24時間睡眠覚醒症候群の原因は、今のところ解明されていません。しかし、体内時計の調整が正しく行われないために、睡眠と覚醒のリズムが後退すると考えられています。

なぜ体内時計の調整ができないのか

「夜になったら自然と眠くなり、朝になったら目が覚める」という基本的なサイクルは、体内時計によって作られています。その周期は、24時間よりも少し長いです。具体的には、24時間10分くらいの人が多いと言われています。地球の1日24時間よりも約10分長いので、何もしなければ、毎日10分ほど睡眠時間帯が遅れていくはずです。

しかし、実際には多くの人が24時間周期の日常を過ごしています。実は、朝に太陽の光を浴びると、体内時計のリズムは前進します。つまり、毎朝太陽の光を浴びることによって、10分のズレが修正されているのです。

裏を返すと、太陽光によって体内時計が調整されなければ、毎日少しずつ睡眠時間帯が後退することになります。非24時間睡眠覚醒症候群の方は、まさにその状況に陥っていると言えます。

では、なぜ太陽光を浴びても体内時計の調整ができないのでしょうか。

これに関しては、光感受性の問題が指摘されています。メラトニン抑制率という指標を使った測定によると、非24時間睡眠覚醒症候群の患者さんでは光感受性の低下が示唆されています[出典]。光に対する感受性が弱いと、朝日を浴びても体内時計を調整しきれない可能性が出てきます。

また、何らかの理由のために日光を浴びる時間が減ることも、体内時計の調整を妨げる原因になります。

(非24時間睡眠覚醒症候群は)統合失調症や自閉症のある人に発症することもあります。統合失調症や自閉症のある人は、あまり外に出ようとしないので、太陽の光を浴びる機会が少なく、生活が不規則になりがちです。

こうした”時間の手がかり”の少ない状況が、非24時間睡眠覚醒症候群を発症する要因になるとされています。

睡眠の病気 (別冊NHKきょうの健康) / NHK出版

ひとたび非24時間睡眠覚醒症候群にかかると、仕事や学業が困難になることもあって、外出機会が減少します。さらに、昼夜逆転の時期には日光への暴露時間が減ります。そうして非24時間睡眠覚醒症候群の症状がますます悪化します。悪循環に陥りやすいのが、この睡眠障害の特徴と言えます。

夜型生活が関係している可能性も

非24時間睡眠覚醒症候群と関連の深い睡眠障害に「睡眠相後退症候群」があります。これは、睡眠時間帯が後方にずれてしまう睡眠障害です。 夜中(2~4時)まで寝付くことができなくなります。また、起床時刻は昼頃にずれこみます。

この睡眠相後退症候群が先に発生し、そのあとで非24時間睡眠覚醒症候群に発展する場合があります。

視覚障害のないFRT(=非24時間睡眠覚醒症候群 )の約1/4にDSPT(=睡眠相後退症候群 ) の先行を認め、またDSPT患者が1日3時間ずつリズムを後退させる時間療法を契機としてFRTに移行した症例の存在から、非視覚障害者のFRTはDSPTの重症例とする見解があり(以下略)

睡眠医療 特集 生体リズムの基礎と臨床 / ライフ・サイエンス

睡眠相後退症候群は、夜型リズムの生活を続けたことによって発症すると考えられています。つまり「夜型生活 → 睡眠相後退症候群 → 非24時間睡眠覚醒症候群」という推移がありえます。

補足:どうして25時間周期なのか?

先ほど、体内時計の周期は約24時間10分と述べました。体内時計が調整されなければ、毎日10分ほど睡眠リズムが後退していくはずです。しかし、非24時間睡眠覚醒症候群の場合、10分ではなく1時間も睡眠リズムが遅れていきます。

なぜ、毎日1時間も後退していくのでしょうか。専門書を調べてみましたが、明確には分かりませんでした。ただ、次の2つは関係しているようです。

1つ目の要因は、もともとの体内時計の周期がとても長いことです。体内時計の周期には個人差があります。25 時間近くの周期を持つ人がいても不思議ではありません。

2つ目の要因は「主観的な夜」に強い光を浴びたために、体内時計の周期が延びていることです。 主観的な夜というのは、聞き慣れない言葉だと思うので、少し詳しく説明します。

一般的な睡眠リズム(夜眠って朝起きる)の人にとっては、「主観的な夜」と「客観的な夜」は同じものです。午後19~20時から夜になる、というのが一般的な認識だと思います。

しかし、昼夜逆転している人の場合はどうなるでしょうか。仮に夜の20時に起床して、翌日の昼12時に就寝するとします。午後20時は、客観的に見れば夜です。しかし、その時間に起床した人にとっては朝です。なぜなら、起床時刻が、主観的な朝になるからです。

同様に、昼の12時は客観的に見れば昼ですが、その時間に就寝する人の主観では夜になります。

そして、主観的な夜に強い光を浴びると、体内時計の周期が延長する可能性があります。

時刻が昼の時間帯になると、主観的な夜に太陽光を浴びることになり、27時間という極端に長い周期が観察された症例が報告されている。

睡眠学 / 朝倉書店

27時間というのは極端な例かもしれませんが、多少の延長は誰にでも起こるはずです。就寝前に光の刺激を浴びたために、25時間という周期が作られている可能性は高いと思います。

非24時間睡眠覚醒症候群を改善するには

非24時間睡眠覚醒症候群は、発症率の低い睡眠障害です。治療法について明言できるだけの知見は、蓄積されていないようです。

しかし、何も手段がないわけではありません。

  • 高照度光療法
  • メラトニン療法
  • ビタミンB12療法

の3つが、非24時間睡眠覚醒症候群の改善に効果的と言われています。

とくに、高照度光療法とメラトニン投与の有効性が注目されています。両者を組み合わせて治療することも多いようです。

以下、これらの治療法について詳しく述べていきます。

1.高照度光療法

高照度光療法は、人口照明器具を使って体内時計を調整する治療法です。直視するとまぶしい2500ルクス以上の光を、起床と同時に1~2時間浴びます。

◎ 高照度光療法のイメージ図

強い光の刺激には、体内時計の位相を変化させる働きがあります。その働きを利用すると、体内時計の周期を短縮できます。

先ほど述べましたが、非24時間睡眠覚醒症候群の発症には

  • 光に対する感受性が弱まってる
  • 日光を浴びる時間自体が減少している

という2つの要因が考えられます。そのため、意図的に強い光を浴びる高照度光療法は、治療の大きな助けになると思います。

ただし、ひとつ問題もあります。非24時間睡眠覚醒症候群にかかっていると起床時間が毎日遅れていくので、決まった時刻に光療法をするのが困難なのです。

睡眠障害の種類によって、高照度光療法をおこなうタイミングは異なります。非24時間睡眠覚醒症候群の場合は、自然に覚醒してから実施するのではなく 、朝の一定時刻に実施するのが理想です。

しかし、その時間帯に寝ているとしたら、光療法を毎日行うのは不可能です。そのため、少し工夫が必要になります。

専門書によると、

自由継続型では入眠時刻が毎日少しずつ遅れていくが、これが望ましい時刻になる数日前から、朝の高照度光療法(1~2時間)を希望する起床時刻に開始する。

睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第2版 / じほう

とあります。

たとえば、朝7時の起床を固定したいとします。この場合、高照度光療法を開始するのは、朝4~5時に目が覚めるようになった時です。

なお、朝の一定時刻に実施するといっても、朝に就寝するサイクルのときに高照度光療法をおこなうと逆効果になります。体内時計がさらに延長します。この点だけは注意しておきましょう。

2.メラトニン療法

メラトニンは人間の体内で産生される物質です。睡眠ホルモンとも呼ばれ、眠気を誘う物質として知られています。しかし、その働きは単に寝つきをよくするだけではありません。メラトニンには体内時計のリズムを調整する働きもあります。

メラトニンは、サプリメントの形で経口摂取することができます。具体的な利用方法ですが、 専門書に次の記載がありました。

メラトニンの投与タイミングは睡眠相が望ましい時刻に一致する時期に、前夜の入眠時刻の7時間前に設定し、反応をみながら適時変更するのが現実的と考えられる。

睡眠医療 特集 生体リズムの基礎と臨床

これは、前述の高照度光療法と同じような考え方です。たとえば、朝7時の起床を固定したいとします。この場合、朝7時に目が覚めるようになった日から、メラトニンの服用を始めます。
(ちょうど良い睡眠覚醒のサイクルになるまで、服用を待つ必要があるということ)

また、メラトニンの服用時刻にも気をつけなければいけません。メラトニンを飲むのは、前夜の入眠時刻の7時間前です。前夜に眠ったのが午後10時とします。午後10時から7時間を引き算し、午後3時にメラトニンを飲めばいいということです。

※ 上記の服用方法は、メラトニンの一般的な使い方からかけ離れています。専門医の指導のもと実施しましょう。

次に、メラトニンの服用量についてですが、0.1~5mgとかなりの幅があります。一定のコンセンサスを得られるだけの知見はないようです。

概日リズムがフリーランしている8人の視覚障害者において、毎日10mgメラトニンを投与することによって24時間のリズムに同調することができ、そのうち3名は0.5mgに投与量を減らしても同調可能であったことを報告している。

眠りの科学とその応用《普及版》 / シーエムシー

とのことですが、毎日10mgの投与というのは、かなりの量です。これだけ多量に服用すると、メラトニンの傾眠作用が翌朝まで残ってしまい、朝起きられなくなる可能性が出てきます。

市販のサプリメントだと1mgの錠剤があるので、まずは1mgから試してみるのが無難だと思います。
(あるいは錠剤を半分にカットして0.5mgから始める)

なお、メラトニンは薬事法の関係で日本国内では売られていませんが、海外サプリメントを取り扱っている通販会社から購入することができます。服用する量にもよりますが、1か月あたりの費用は1000円程度です。

img-melatonin1

メラトニンサプリ一覧(amazon)

amazonでのメラトニンの取り扱いは無くなってしまったようです。代替としてiherb(アイハーブ)というサイトが便利です。

(初めて注文する方は5ドルの割引を受けられます!)

3.ビタミンB12療法

ビタミンB12は、光感受性を高める作用があると考えられています。朝の太陽光に対する感受性が強まれば、体内時計の周期を調整しやすくなります。

しかし、その効果は弱く、不安定なことも多いようです。そのため、現在では補助的な治療法という位置づけになっています。

残念ながら本邦で行われた多施設共同治験では睡眠相後退症候群および非24時間睡眠・覚醒症候群に対するビタミンB12の有効性は確認できなかった。

睡眠医学を学ぶために / 永井書店

という結果も出ています。

ただし、高照度光療法との併用は有効かもしれません。ビタミンB12によって光の感受性が強くなれば、高照度光療法の効果が強化される可能性があるからです。

なお、摂取量とタイミングについてですが、

ビタミンB12は一日量1.5~3.0mgを毎食後経口投与する。

睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第2版 / じほう

とのことです。

ビタミンB12はサプリメントの形で摂取できますが、1日1.5mgもの量を摂るとなると大変です。たとえばネイチャーメイドのB12サプリだと、一錠あたり50ug(マイクログラム)=0.05mgです。つまり30錠も飲まなければ、一日量の1.5mgに達しません。

その点、海外(アメリカ)のサプリメントは高容量です。1.5mgを手軽に摂ることが可能です。
(逆に言うと、摂取量の細かい調整には向いていない)

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