睡眠薬を使うと依存になるのか?その詳細と薬がやめられない理由

睡眠薬を利用する上で「依存性があるのかどうか」は気になる問題です。かりに不眠症が解決したとしても、いつまでも薬をやめられなかったらどうしよう……そんな不安を持っている方も多いと思います。

一言で睡眠薬と言ってもその種類はさまざまですが、その中には明らかに依存性の高いものもあります。そのひとつは、今から100年ほど前に誕生した「バルビツール酸系」と呼ばれる種類の睡眠薬です。優れた睡眠作用を持っている反面、依存性も高く、大量服用におちいりやすいことが知られています。

バルビツール酸系の睡眠薬としては、ラボナやイソミタールなどがあります。しかし、現在では極度の不眠症でないかぎり処方されないので、依存性について詳しく知っておく必要はありません。

そのかわりに知っておくべきのは「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」と呼ばれる睡眠薬の依存性です。たとえば、マイスリーやハルシオン、デパスなど有名どころの睡眠薬は、すべてベンゾジアゼピン受容体作動薬に分類されています。

いま現在処方されている睡眠薬の多くは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬です。そのため、この種類の睡眠薬の依存性について知っておけばいい、ということになります。 当ページでも、それを念頭において話を進めていきます。

なお、先に結論を述べておくと、マイスリーやハルシオンなどのベンゾジアゼピン受容体作動薬にも依存性はあります。しかも、医師に指示された服用量を守ったとしても、依存におちいる可能性が無視できません。

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睡眠薬依存とはどんな状態を指すのか

睡眠薬依存を理解するためには、まず「薬物依存」について知るのが先決です。なぜなら、睡眠薬依存は薬物依存の一種だからです。

薬物依存というと、ちょっと大げさな感じもするかもしれません(麻薬のイメージがあると思うので)。しかし、アルコールやタバコなどの身近な嗜好品をやめられないのも薬物依存の一種です。

薬物依存の定義は次のようなものです。

薬物乱用の繰り返しの結果生じた脳機能の異常のために、薬効が切れてくると薬物を再度使いたいという欲求(渇望)が湧いてきて、その渇望をコントロールできずに、薬物を再び使ってしまう状態を言います。

引用元:薬物の乱用・依存・中毒の違い 超理解 ! シリーズ リチェッタ:ノバルティスファーマ株式会社

さらに、薬物依存は次の2つに分けられます。精神依存と身体依存です。この2つの違いを理解するのがポイントになります。

まず精神依存についてですが、これは「快楽を得るために薬物を摂取したい」という衝動的な欲求が現れることを指します。多くの違法薬物は、この精神依存と強い関わり合いがあります。

しかし、現在主流の睡眠薬(=ベンゾジアゼピン受容体作動薬)は、精神依存については比較的起こりにくいです。なぜなら、摂取すること自体が快楽や多幸感を生むわけではないからです。

次に身体依存についてです。これは、薬を飲み続けたために「薬物が体の中にある状態が普通である」と錯覚してしまうことです。

薬が体内にあるのが普通というのは、言い換えれば薬が体内からなくなった状態は異常ということです。そのため、薬物の服用をやめるときに、さまざまな不快症状(離脱症状)が発生します。たとえば、アルコールを断つ際の手のふるえは、離脱症状のわかりやすい代表例です。

睡眠薬の場合、問題となるのはもっぱら身体依存のほうです。服用している間には気づかないのですが、薬をやめる段階になるとさまざま離脱症状が出てきて、服用を続けざるを得なくなります。

身体依存のせいで薬を中断できない

では、睡眠薬の身体依存におちいると、具体的にはどういう離脱症状が現れるのでしょうか。下記の表にまとめてみました。

表から見てとれるように、離脱症状は多岐にわたりますが、その中でも不眠や不安・イライラが多く現れます。これらの症状は精神的なものなので、身体依存ではなく精神依存に分類されるように思うかもしれません。しかし、あくまでも薬を中止したときに現れるので、身体依存に分類されています。

ここで問題なのは、離脱症状のひとつに「不眠」があることです。つまり、睡眠薬を使って眠れるようになっても、いざ薬を中断したら一時的に眠れなくなってしまう可能性があるのです。

しかも、一時的な不眠といっても1~3週間は続きます。服用が長期間におよんでいれば、離脱時の不眠はさらに長引く可能性もあります。

もちろん、もともとの不眠の原因がしっかり解決できていれば、断薬する際の不眠はそのうち消えてくれます。

しかし、離脱症状としての不眠は強烈に襲いかかってきます。その苦しさから逃れるためだけに服用を続けてしまい、結局いつまでも睡眠薬を手放すことができない人は決して少なくありません。

もともとの不眠は治っているのに、離脱症状のせいで不眠状態になる。これが睡眠薬をやめられない理由であり、そして睡眠薬依存の大きな問題点なのです。

常用量でも依存におちいる

ひと昔前までは、睡眠薬を乱用するせいで身体依存になると考えられていました。言いかえると「正しく服用しているかぎり依存におちいることはない」という考えが一般的でした。

しかし、実際は医師に指示された量を使っていても、身体依存になる可能性があります。これは医師の腕が悪いという意味ではありません。どんなに適切な服用量だったとしても、依存になりうるということです。

これは常用量依存(臨床用量依存)と呼ばれていて、睡眠薬を使う上で大きな懸念材料になっています。

では、なぜ適切な量でも身体依存になってしまうのでしょうか。それは、服用量だけでなく「服用期間」という要因があるからです。

睡眠薬は、脳の活動を抑えることによって眠気をもたらします。しかし、長期間にわたって睡眠薬を使っているとどうなるでしょうか。薬の力に頼るのが普通になってしまうため、自力では脳の活動を抑制できなくなるのです。その状態で睡眠薬をやめても、離脱症状としての不眠が現れるせいで眠れません。これは立派な身体依存状態です。

では、どのくらいの期間使い続けると危険なのでしょうか。ひとつの目安になるのは「6か月」です。なぜかというと、常用量依存(臨床用量依存)の定義に次の一文があるからです。

不安や不眠などの治療目的で開始した臨床用量を、6か月以上継続服用したものであること

もちろん、使っている睡眠薬の種類や個人の体質も関係してきます。そのため、6ヶ月以内なら絶対大丈夫とは言い切れません。できるだけ短い期間にとどめておくのが無難なのは間違いないでしょう。

しかし、睡眠薬をやめるのは簡単ではありません。実際、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を処方された患者の30%が1年以上、そして10%が3年以上も服用を続けている、という調査報告もあります。その中には、もともとの不眠自体はすでに解決しているのに、断薬しようとすると離脱症状としての不眠に悩まされるため、薬をやめられない人が多数いるようです。

できるだけ短期間の服用にとどめるためには、睡眠薬に頼りきらないことです。そもそも、睡眠薬がもたらすのは強制的な睡眠です。不眠の「原因」が解決できるわけではありません。

何が不眠の原因になっているのか、それは人それぞれです。しかし、生活習慣が関係している場合は多いと思います。

たとえば、夜遅くにコンビニに行って強い光を浴びるだけでも、眠れなくなる原因になります。「質の悪い睡眠をまねく夜のNG習慣7つ」がヒントになると思いますので、参考にしてみてください。

補足

睡眠薬には依存性の高いものと低いものがあります。詳しくは、「依存症になりにくい睡眠薬」で述べています。なお、ロゼレムベルソムラは身体依存のリスクがないため、常用量依存も起こりません。

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