極端に早い時間に寝てしまう『睡眠相前進症候群』の原因と治療法

『睡眠相前進症候群』は、睡眠の時間帯が極端に早くなる睡眠障害です。18時~20時に眠りにつき、午前2時~3時に目が覚めるというパターンをとります。

睡眠時間帯が前方向にずれているだけなので、必要な睡眠自体はしっかり取れます。眠りの深さも充分なため、健康上の問題が生じることもありません。

しかし、夕方以降に強い眠気が生じるせいで、夜間の活動に不都合が出てきます。たとえば「夕食後、家族との時間を過ごしたいと思っても、すぐに眠くなるので一緒に過ごせない」などです。また、見たいテレビ(野球のナイター中継など)を見れないのが困る、という人もいるようです。

多くの場合、この睡眠障害は中年以降に始まります。10代~20代の若い世代がかかることは稀です。

以下は、専門書に載っていた症例です。少し長いですが、典型例として分かりやすいと思うので引用しておきます。

65歳でサラリーマンをリタイアしました。自宅の脇に畑をつくり、自由な生活を満喫していました。しかし、1年ほど前から夜7時頃には眠くなって就寝し、翌1時から3時頃には目が覚めてしまい、その後眠れなくなりました。このため睡眠外来を受診しました。

生活パターンを問診したところ、朝は眠れないので日の出とともに畑仕事をし、夜はすることがないうえに眠気が強いので寝室でテレビを見ながらついウトウトしてしまうとのことでした。とくに気分の落ち込みはありません。

出典:睡眠学Ⅱ 睡眠障害の理解と対応 / 北大路書房

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睡眠相前進症候群の原因とは?

睡眠相前進症候群の根本的なメカニズムは、まだよく分かっていないようです。ただし、人間の眠りを制御している「体内時計」の周期が短くなると、睡眠相前進症候群が発症することは明らかになっています。

体内時計は「夜になったら自然と眠くなり、朝になったら目が覚める」という基本的な周期を作っています。その周期は、24時間よりも少し長く、24時間10分くらいの人が多いと言われています。

しかし、体内時計の周期は、年齢を重ねると短くなります。そのため、24時間10分だった周期が、24時間未満(たとえば23時間50分など)になる可能性もあるのです。

仮に、体内時計の周期が24時間よりも短くなったとしたら、どうなるでしょうか。一日の周期は24時間なのに、それより短い周期で体内時計が動いているわけですから、就寝時刻も起床時刻も、前方向にずれやすくなります。それが行き過ぎた結果、睡眠相前進症候群が引き起こされます。

なお、専門書によると、

睡眠後退型自由継続リズム型が若年者に多いのに対して、(睡眠相前進症候群は)高齢者に多く見られる。正確な頻度は分かっていないが、中年以降に1%くらい存在することが疑われており、加齢により頻度が増す。

出典:睡眠学 / 朝倉書店

とのことです。やはり、加齢のために体内時計のサイクルが短縮化されて、睡眠相前進症候群になると考えてよさそうです。

もちろん、体内時計の周期には個人差があります。歳をとっても全員が睡眠相前進症候群になるわけではありません。ただ、若いときから朝に強くて夜に弱かった人は、この睡眠障害にかかりやすいです(いわゆる朝型体質の人)。

ひばりーふくろう型質問紙法は、「夜型」と「朝型」の時間型を調べるのに有用なツールである。概日リズム睡眠障害・睡眠相前進型患者では明確な朝型と採点される。

睡眠障害国際分類 第2版 診断とコードの手引 / 医学書院

と専門書には記載されています。朝型・夜型の判別は、ふくろうとひばりの質問表(下記URL)を参考にしてみて下さい。
http://park3.wakwak.com/~yamashita-iin/fukurou.htm

なお、朝型・夜型というのは、ある程度は時計遺伝子によって定められています。つまり、睡眠相前進症候群には遺伝的要因が絡んでいるということです。とくに10代~20代など、若くしてこの睡眠障害にかかる場合は、遺伝的な要因が強いと考えられます。

注意

睡眠相前進症候群では、就寝と起床が早くなるだけです。眠りの質(=深さ)はきちんと確保されています。そのため、日中に強い眠気が生じることはありません。

日中に過剰な眠気を感じる場合は、別の原因が潜んでいる可能性があります。たとえば、睡眠時無呼吸症候群のために、眠りが浅くなっているなどです。そのほか、周期性四肢運動障害(睡眠中に足がピクピク動く)やレム睡眠行動障害なども、日中の強い眠気を引き起こす原因になります。
(それぞれの詳細はリンク先ページで述べています)

自分の症状が良くわからない方は、専門の医療機関を受診するのもいいと思います。「睡眠障害の病院と専門医を探すときに知っておきたいこと」を参考にしてみて下さい。

『睡眠相前進症候群』を改善するには

1.高照度光療法をする

先ほど、睡眠相が前進してしまうのは「体内時計が前にずれるから」と述べましたが、体内時計はいろいろな方法で調整することができます。

そのひとつが高照度光療法です。これは、強めの光を1~3時間浴びるという単純な治療法です。

体内時計を遅らせたいのか、それとも早めたいのかによって、高照度光療法をする時間帯は異なります。睡眠相前進症候群の場合は、眠気が強くなる夕方ころに強い光を浴びるようにすると効果的です。
(体内時計のリズムを後ろにずらすことにつながるため)

ただし、注意点がひとつあります。それは、高照度光療法は「強い光」でなければ効果が出にくいということです。

強い光というのは、最低でも2500ルクス以上の光です。家庭にある一般的な蛍光灯の明るさは500~1000ルクス程度ですので、全然足りません。そのため高照度光治療をするのであれば、専用機器を用意する必要があります。

2.起きたあとは光の刺激を徹底的に避ける

先に述べた高照度光療法をするのが一番確実ですが、それ以外にも睡眠相前進症候群に対処する方法はあります。鍵になるのは「メラトニン」という体内物質です。

メラトニンは眠気を引き起こすホルモンです。通常、夜になると分泌量が増えて自然な眠気をもたらします。しかし、睡眠相前進症候群のために体内時計が前倒しになっていると、夕方ころからメラトニン分泌がさかんになります。その結果、夜になる前に眠くなってしまうのです。

裏を返すと「メラトニンの分泌が高まるタイミングを後ろにずらせば、眠くなる時刻も遅くなる」ということです。

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。
大切なのは、起床後の過ごし方です。

  1. 起きたあとは部屋の蛍光灯をつけるのではなく、照度の低い暖色照明の中で過ごすようにする。
  2. 早朝にはサングラスを使って、太陽の光を目に入れないようにする。

なぜこの2つが大切なのかというと、メラトニンは強い光を浴びてから14~16時間後に分泌が高まるからです。たとえば朝5時に強い光を浴びると、19時くらいには体内のメラトニン濃度が高まってしまいます。

しかし、起床したあと光の刺激を徹底的に避ければ、メラトニンの分泌タイミングを遅らすことができます。その結果、眠くなる時間が後方にシフトするのです。

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