睡眠薬を使って夜型生活を改善するのはアリなのか?

夜型体質の人は、夕方から夜にかけて活力が出てきます。そして、元気な状態が夜遅くまで続くために、なかなか眠くなりません。眠気がやってくるのは、夜中の1~3時です。眠る時間帯が普通の人よりも遅いため、朝早く起きるのはとても苦手です。

この睡眠リズムは、仕事や学業、家事・育児などをしていく上で、不都合になることが多々あります。そのため「何とかして夜型のリズムを改善したい!」と思っている方は少なくないようです。実際、yahoo知恵袋を見てみると、夜型はどうやって直せばいいか?という質問が多数見つかります。

そんな中、睡眠薬を使って夜型を治すのは有効でしょうか?という質問が寄せられていました。

夜型を治すために、市販の薬を使うことは有効でしょうか?

精神科で睡眠薬…というところまでいかなくて、何か市販の睡眠薬や鎮静剤のような薬を使いたいのですが。また、よい販売薬の名前がわかりましたら教えていただきたいです。

(中略)

夜に市販の薬を飲んで眠り、朝起きる、という感じで治せないかと考えています。市販の薬は、こういった使い方は有効でしょうか?

引用元:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1236459942

たしかに、薬の力で早めに寝てしまえば、そのぶんだけ朝は早起きができます。それを続けていくと、早寝早起きの習慣が身について、夜型生活から脱却できる……そんな気もします。マイスリーハルシオンなど持続時間の短い睡眠薬を使えば、睡眠作用が朝方まで残ってしまう心配もありません。

しかし、実際のところ睡眠薬は夜型改善にはあまり向きません。なぜなら、夜型を直すためには、強制的に早い時間に眠るだけでは不充分だからです。

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睡眠薬では体内時計のリズムを修正できない

睡眠薬がなぜ得策と言えないのか、それを理解するためには、まず「夜型の人とそうでない人の違い」を知る必要があります。

夜型体質の人は、ホルモンの分泌リズムや体温の変動リズムが、普通の人に比べて後ろにずれています。とくに重要なのは、「メラトニン」というホルモンの分泌タイミングが、後方にシフトしていることです。

メラトニンは眠気をうながす脳内物質で、睡眠ホルモンとも呼ばれています。夜になると分泌が増えて、ある一定のレベルまで体内濃度が高まると、人は眠くなります。そして、その分泌量が増えるタイミングは、夜型の人とそうでない人では2~3時間も違いがあります。

● メラトニン分泌と時刻の関係

メラトニンの増える時刻が2~3時間も遅ければ、体内濃度が上昇するのは深夜になってからです。そのため、夜型の人は夜がふけてから眠くなるのです。また、朝になってもメラトニン濃度が下がりきらず、早起きするのは困難になります。

ここで重要なのは、メラトニンの分泌リズムを制御しているのは「体内時計」だということです。体内時計は、脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分に内蔵されている器官です。

つまり、体内時計が後方にずれているせいで、メラトニンの分泌リズムも後方にシフトしてしまっているのです。

裏を返すと、体内時計のリズムを前方向に修正できれば、メラトニンが分泌される時間帯も前倒しできる、ということです。夜11時に眠れるようにもなりますし、朝7時に起きれるようにもなります。

しかし、一般的な睡眠薬には、体内時計のリズムを修正する力はありません。睡眠薬で眠気が生じる理由は、脳内のGABA受容体という部分に作用して、強制的に神経活動を抑えるからです。メラトニンの分泌には関与していません(※ 後述する「ロゼレム」という睡眠薬は例外)。

睡眠薬を飲んで早く寝たぶん、起床時刻はたしかに早くなるでしょう。しかし、メラトニンの分泌リズムは変わらないので、明け方になってもメラトニン濃度は高いままです。そのため、朝起きるのが非常につらくなります。身体がだるくてパフォーマンスが上がらない日々が続くことにもなります。

つまり、睡眠薬を使って早寝早起きした場合、「その人がその時点で持っているメラトニンリズムと全然違うリズムで寝起きするはめになる」ということです。

もちろん、夜型から朝型への変化が定着するまで睡眠薬を飲み続ければ、体内時計も前方向に修正されます。ただし、それまでに3カ月くらいはかかるようです。

「1週間だけ睡眠薬を使ってみたけど、早寝早起きできるようになったから薬飲むのやめた!」というような場合、すぐに夜型生活に逆戻りするでしょう。短期間では、体内時計は直しきれないからです。

睡眠薬を使用せずに夜型を改善するには?

先ほど、「メラトニンの分泌は体内時計によって制御されている」と述べましたが、実はその逆も成り立ちます。メラトニンが体内時計のリズムをコントロールしているという側面もあるのです。

そのため、体内のメラトニン濃度を夜の早い時間帯に上げられれば、それにつられて体内時計のリズムも前方向に修正できます。

これを実現する一番の方法は、メラトニンのサプリメントを摂取することです。サプリメントを使えば、メラトニンの体内濃度を意図的に上げることが可能だからです。

普段眠くなる時刻の「2時間前」にメラトニンを摂取すると、体内時計のリズムを前倒しする効果が出ると言われています。たとえば、夜中の2時に眠気がやってくるなら、午前0時ころにメラトニンのサプリを使うようにすればOKです。

ちなみに、睡眠障害のひとつである「入眠障害」を改善するために、メラトニンを使う場合もあります。この場合は眠りにつく10~20分前にメラトニンを摂ります。

しかし、体内時計を前倒ししたいときは就寝時間の2時間前に使います。求めている効果(単なる入眠なのか、体内時計修正なのか)で摂取タイミングが変わるので、注意しておきたいところです。

また、朝起きたときや午後の早い時間帯など、おかしなタイミングでメラトニンを使うと、体内時計のリズムが大きく変化するので注意しましょう。
(それを逆手にとれば時差ぼけを直すことが可能です。詳細:超シンプルな時差ぼけの治し方

新しい睡眠習慣が定着するまで、1カ月くらいはメラトニンを使い続ける必要があります。早寝早起きが苦にならなくなってきたら、そのあとはメラトニンの使用頻度を下げていけばOKです(2晩に1回、3晩に1回など)。

もう一点、気をつけておきたいのは摂取量です。初めて使うのなら1mg~3mgのメラトニン錠剤をオススメします(量の調節がしやすいから)。また、5mgや10mgといった高容量のメラトニンを使うと、翌朝まで眠気が強く残る可能性があるため、最初は避けたほうが無難です。

補足

メラトニンのサプリメントは、アメリカではビタミン剤のような扱いをされていて、ドラックストアに陳列してあるそうです。しかし、残念ながら日本国内の薬局では売っていません。そのため、海外から通販で購入するのが一般的な入手方法です。

買い方については「メラトニンを通販で購入するときに知っておきたいポイント」が参考になると思います。

追記:ロゼレムという睡眠薬も有効な選択肢

睡眠薬のなかには、例外的に体内時計に働きかける薬もあります。それは、ロゼレム(薬剤名:ラメルテオン)です。比較的新しい睡眠薬で、2010年に誕生したばかりです。睡眠リズムを調整する作用が強いため、夜型リズムの改善に向いています。

一般的な睡眠薬と同じく、ロゼレムも薬局では手に入りません。まずは病院に行って、専門医に診てもらう必要があります。睡眠障害クリニックや大きな病院の睡眠外来で事情を話せば、処方してもらえるはずです。

「ロゼレムを服用するのと、メラトニンを直接摂るのではどっちが効果的なのか?」という疑問を持つ方もいると思います。どちらが良いのか、一概には言えません。ただ、メラトニンはもともと体内に存在している物質です。薬よりは、身体への負担は少ないと思います。また、依存性もありません。

そのため、まずはメラトニンを使ってみて、期待していた効果が得られなかったらロゼレムを服用する、というのが順番的にはいいと思います。

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