ナルコレプシーの原因はまだ判明していないけれど、分かってきたこともある

日本人に比較的多くみられるナルコレプシー。これまで、日本やアメリカの研究者によって研究されてきましたが、未解明なことが多いのが現状です。

しかし、分かってきたこともあります。とくにナルコレプシーの原因はだいぶ絞られてきました。そこで、現在有力視されている2つの原因についてご紹介します。

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1.遺伝子レベルでの特徴によるもの

これまでの研究によって、ナルコレプシーの方には遺伝子的な特徴があることが分かっています。具体的にはヒト白血球抗原(HLA)に明らかな特徴があります。

ヒト白血球抗原は、簡単にいうと白血球の血液型のようなものです。ナルコレプシー患者の方はこの抗原のうち、次の4つが100%に近い割合で陽性です。

  • DQB1*0602
  • DQA1*0102
  • DRB1*1501
  • DRB5*0101

ヒト白血球抗原は、遺伝的な要因によって陰性・陽性が決まります。そのヒト白血球抗原とナルコレプシーに関連が見られるわけですから、ナルコレプシー発症にも遺伝が関係すると考えるのが自然です。

しかし、これらの抗原が陽性だからといって、かならずナルコレプシーを発症するわけではありません。実際、ナルコレプシーにかかっていない人でも、これらの抗原は数10パーセントの確率で陽性です。

つまり、ナルコレプシーが発症する原因は、遺伝のほかにもあるということです。

このことを如実に示しているものとして、一卵性双生児の調査結果があります。

一卵性双生児は、基本的には同じ遺伝子をもって生まれてきます。そのため、どちらかがナルコレプシーを発症したなら、もう一人も遅かれ早かれ同じく発症するはずです。

しかし、現実にはそうなっていません。ナルコレプシーの一卵性双生児は世界で17組知られていますが、そのうち双子が両方ともナルコレプシーなのは5組だけです。[※1]

遺伝子レベルで一致してる双子ですら、発症する・しないがマチマチなわけですから、これは遺伝以外の要因があることを示していると言えます。

では、遺伝以外の要因とはいったい何なのでょうか。

それは「精神的なストレス」と「睡眠不足」です。実際、40代になって家庭の問題で精神的ストレスにさらされ、睡眠不足が続いたせいでナルコレプシーになってしまったという例があります。[※2]

※1,2:ナルコレプシーの研究 / 本多 裕 P.97~98 による]

2.オレキシンが不足している

遺伝的要因のほかに、ナルコレプシーの要因として注目されているのは「オレキシン」という物質です。

オレキシンは、1990年代後半に発見された脳内物質です。もともとは食欲を左右する物質として研究されてきました。動物の脳にオレキシンを投与すると、食欲が増えてエサをたくさん食べることが確認されています。

そのオレキシンが、睡眠(とりわけナルコレプシー)に関係していることが明らかになってきました。

たとえば、遺伝子を操作してオレキシンが欠損したマウスを育てると、脱力発作がひんぱんに起きるようになります。また、脱力発作が起きたときには「覚醒状態」から「レム睡眠状態」にとつぜん移行することも確認されています。[※3]

通常、マウスでも人間でも、眠りに入るときは「覚醒→ノンレム睡眠→レム睡眠→……」という順番で状態が変わっていきます。

しかし、オレキシンがなくなると覚醒の次にレム睡眠が現れるようになるのです。そしてこれはナルコレプシーの睡眠パターンと一致しています。

現在では、ナルコレプシー患者の方の多くに、オレキシンを作る神経細胞に何らかの異常(変性や脱落)があることが確認されています。髄液中のオレキシン濃度が、測定できないほど低くなっていることもあります。

では、オレキシンが少なくなる原因は何なのでしょうか。遺伝によるものという説もありますが、まだ確定的な見解は出ていません。

つまり、現段階で言えるのは、

  • オレキシンが不足するとナルコレプシーの発症確率が上がる
  • しかし、オレキシンが少なくなる原因までは分かっていない

ということです。

ところで、「オレキシンを増やす薬があればナルコレプシーは解決するかも!」と考える方は少なくないと思いますが、現在のところそのような薬は世に出ていません。

しかし、将来的にはオレキシンを制御する薬が開発される可能性は充分にあります。それまでは、情動脱力発作をおさえる三環系抗うつ剤などをうまく利用してしのいでいく、というのが有効な対処法になると思います。

※3:睡眠の科学 / 櫻井 武 による]

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