むずむず脚症候群の原因は「脳内の神経伝達がうまくいっていないこと」かもしれない

夜になると足に不快感・違和感が出て、じっとしていられなくなる「むずむず脚症候群」。
この病気が初めて文献に載ったのは1685年のことです。それから300年以上たちましたが、現代の医学でもむずむず脚症候群の原因は完全には解き明かされていません。
しかし、最近10年の研究で分かってきたこともあります。ここでは、むずむず脚症候群の原因として現在有力になっている説をご紹介します。
頭の中の「神経伝達」に原因がひそんでいる?
むずむず脚症候群の原因を理解するためには、手や足などから伝わる「外部刺激」と、その刺激を受けとる「脳内の働き」について知る必要があります。
人間の身体はつねに外部から刺激を受けています。
たとえば手の指なら、
- 「パソコンのキーボードを叩く」
- 「スマホの画面をさわる」
- 「本のページをめくる」
などです。たとえ小さな動作だとしても、何らかの刺激が指に伝わります。そして、指が受けとった刺激は、末梢神経からせきずいを通って脳まで運ばれます。
ここで重要なのは、脳に届いた刺激(=情報)がその後どう取り扱われるのか?という点です。人間の脳内では「神経細胞」というものを使って、情報のやりとりをしています。この神経細胞は、お互いが物理的にくっついているわけではなく、情報を送る側と受けとる側のあいだに隙間があります。
そして脳内の神経細胞は、片方が「神経伝達物質」と呼ばれるものを放出し、もう片方がそれを受けとることによって情報を受け渡しします。
神経伝達物質の受け渡しが正常なら、手や足から受けた外部刺激も正確に脳まで伝わります。たとえば先ほど挙げた「パソコンのキーボードを叩く」という動作をすれば、固いプラスチックを叩いたような感触が正しく知覚できるわけです。
しかし、何らかの理由で神経伝達物質の流れが異常になると、外部からの刺激を正しく知覚できなくなります。
このとき、具体的にどのような知覚になるかといえば、それは場合によります。ただ、「小さな刺激を受けとったはずなのに、それを大きな刺激や別種の刺激と勘違いしてしまう」というのは充分に起こりうることです。
実はむずむず脚症候群も、似たようなことが脳内で起こっていると言われています。
つまり、足が受けた小さな刺激(衣類のこすれ、空気の流れなど)を脳内で大きな刺激に変換してしまうために、むずむず脚の症状(不快感、違和感、イライラ)が出るということです。
むずむず脚症候群に関係するのは「ドーパミン」
脳内の神経伝達物質にはたくさんの種類があります。その中でむずむず脚症候群に関係しているのはドーパミンという物質です。
ドーパミンは「やる気を引きだす脳内物質」として広く知られていますが、そのほかにも役割があります。それは「不要な刺激をカットする」ことです。
人間の身体はつねにいろいろな外部刺激を受けています。しかし、いちいち小さな刺激に反応していては、重大な刺激(大きな痛みなど)がやってきたときに反応が遅れてしまいます。これを防ぐために、状況に応じてドーパミンが働いて、小さな外部刺激を遮断するわけです。
しかし、ドーパミンが神経細胞の間でうまく受け渡しされないと、本来ブロックされるはずだった小さな刺激が必要以上に伝わり、それがむずむず脚の症状を引き起こしてしまう……これが現在立てられている仮説のひとつです。
ドーパミンの機能が正常に働かないのはナゼ?
ドーパミンがむずむず脚症候群に関わっているとして、そもそもドーパミンの伝達に異常が起こるのはなぜなのでしょうか。
残念ながら、その原因はまだ完全には解明されていません。
しかし、ひとつ分かっていることがあります。それは「鉄分不足が関係している」ということです。
脳内の神経細胞には、ドーパミンを放出する側と受けとる側の2種類があります。このうち、ドーパミンを受けとる側(受容体)が正常に機能するためには、鉄分が必要だということが、これまでの実験研究によって示唆されています[※1]。
さらに、ドーパミンそのものを作るためにも、鉄分が必要です。
(正確には、ドーパミンの元となる物質を作るときに鉄分が必要)
つまり鉄分が不足すると、ドーパミンの受け渡しにも影響が出るし、ドーパミンの生成段階でも影響が出るということです。
実際、体内の鉄分量を測定すると、むずむず脚症候群の方は鉄分が不足していることが少なくないそうです。また、男性よりも女性のほうが多く発症するという事実も、鉄分不足との関係性を示唆しています。(女性は月経のため鉄分を失いやすい)。
なお、血液中の鉄分は足りているのに、脳内の鉄分は不足している場合があります。これは、血液中の鉄分を脳までうまく運ぶことができないために起こります。遺伝的な要因が関係しているようですが、今のところ詳しいことは分かっていません。
[※1:睡眠医療 Vol.4 No.1 2010 P.23 による]
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