睡眠薬とお酒を一緒に飲むとどうなる?

眠れない夜に、お酒の力を借りている方は多いと思います。いわゆる「寝酒」ですが、たしかに適量のアルコールには眠りをうながす作用があります。

ただ、寝酒も長い期間続けていると耐性ができてしまい、思うように入眠できなくなります。

そんなときは、お酒に頼るのをやめて、睡眠薬を利用するのもひとつの選択肢です。もちろん睡眠薬にもリスクはあるのですが、純粋な睡眠効果は薬のほうが上です。

しかし、ここで問題になることが一つあります。それは「寝酒をすっぱりやめて睡眠薬に切り替えるのが難しい」ことです。寝酒の習慣を長く続けてきた方は、多かれ少なかれアルコール依存ぎみになっています。そのため、寝酒から睡眠薬に移行しようとしても飲酒をやめられなくて、結局両方を併用する人が多いのです。

では、睡眠薬とお酒は併用しても問題ないのでしょうか。

ほとんどの睡眠薬の添付文書では、「お酒と一緒に飲むべきでない」というニュアンスで書かれています。たとえば、マイスリーの添付文書には次のような記載があります。

臨床症状・措置方法

精神機能・知覚・運動機能等の低下が増強することがあるので、できるだけ飲酒を控えさせること。

(文書全文:http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00046478.pdf

文面どおり理解するなら、お酒との併用が禁忌というわけではありません。あくまでも「できるだけ」控えたほうがいい、という話です。

しかし、実際のところ睡眠薬の作用が強くなりすぎたり、逆に弱くなったりする恐れがあります。

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①睡眠作用が長びいて、眠気が次の日まで続く

睡眠薬とお酒には共通点があります。それは、どちらも脳の活動を強制的に抑えることです。その作用のおかげで眠気がやってくるのですが、両者を同時に使用すると相乗効果が起きて、睡眠作用が増強されてしまいます。

「睡眠作用が強くなるほうが、グッスリ眠れるからいいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。たしかに、単純に眠りが深くなるだけなら、使い方次第ではお酒との併用もアリという感じもします。

しかし多くの場合、単に眠りが深くなるだけでは終わりません。実は、睡眠薬の持続時間まで延びてしまいます。なぜなら、アルコールと睡眠薬はどちらも肝臓で分解されるからです。アルコールの分解に手間取るせいで、睡眠薬がスムーズに分解できなくなるのです。

するとどうなるでしょうか。薬が体内に長時間あり続けるため、朝を過ぎても睡眠作用が残ってしまいます。その結果、「日中ぼうっとしてしまう」「倦怠感が抜けない」などの持ち越し効果が発生します。

とくに、持続時間の長い睡眠薬を使ってる場合は、その効果が持ち越されるリスクが高まります。たとえば、中間作用型のサイレース/ロヒプノール、長時間作用型のドラールなどは元々持ち越しが起こりやすい睡眠薬ですので、お酒との併用は避けたほうが賢明です。

②睡眠作用が持続しなくなり、夜中に目が覚めてしまう

前段の①と矛盾するようですが、睡眠薬と同時にお酒を飲むと、睡眠作用が夜中に弱まることがあります。これは、アルコールが体内で分解されたときに作られる「アセトアルデヒド」という物質の影響です。

アセトアルデヒドは脳を覚醒させる作用を持っています。そのため、アルコールの分解が進んだころ(つまり夜中)に目が覚める原因になります。「お酒を飲むと眠りが浅くなる」というのは多くの方が感じていると思いますが、これはアセトアルデヒドの覚醒作用のせいなのです。

ここで注意が必要なのは、持続時間の短い睡眠薬を服用している場合です。たとえばハルシオンやアモバン、マイスリーなどは服用後3~4時間で睡眠作用が薄れます。そうすると、ちょうど効き目が切れかかったときにアセトアルデヒトの覚醒作用が出てくるため、目が覚めてしまいます。

単に夜中に目が覚めるだけなら、それほど深刻ではありません。しかし、問題は別のところにあります。

夜中に起きたタイミングでは、睡眠薬はまだ身体から抜けきっていません。そのため、睡眠作用自体は切れていたとしても、別の作用(=副作用)が残っている可能性があります。

別の作用というのは、たとえば筋弛緩作用です。アルコールには利尿作用があるので、目が覚めたときにトイレに行きたくなりますが、そのときに睡眠薬の筋弛緩作用が残っているとどうなるでしょうか。トイレに向かう途中で転んで、頭を打ったり骨折したりする危険性が出てきます。

そのほかには、次のような異常な現象も起きやすくなることが分かっています。

  • 夜中に目が覚めたあとの行動を忘れてしまう(健忘)
  • 不安や緊張が高まって、攻撃的な行動をとったり錯乱状態におちいったりする(奇異反応)
  • 冷蔵庫の中のものを手づかみでむさぼり食べてしまう(異常行動)

お酒と併用しても大丈夫な睡眠薬もある

現在よく使われている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系(BZ系)と非ベンゾジアゼピン系(非BZ系)の2種類です。たとえば、ハルシオンはBZ系、マイスリーは非BZ系に分類されています。

この種類の睡眠薬をお酒と一緒に飲むと、先に述べたような相互作用が発生して、睡眠薬の作用が不安定になります。

しかし、お酒と併用しても大きな問題が起こらない睡眠薬もあります。それは「メラトニン受容体作動薬」という種類の睡眠薬です。日本では、武田薬品がロゼレムという商品名で販売しています。BZ系や非BZ系とは異なる作用メカニズムを持っていて、アルコールとの相互作用がきわめて小さいことが分かっています。

そのため、寝酒をやめられそうにない場合には、ロゼレムが第一選択として候補に挙がります。ロゼレムの睡眠作用はそれほど強くないですが、初期の不眠症状にはむしろ弱めの睡眠薬のほうが適しています。

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